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務めていた会社を辞める。それはとっても大きな決断です。そして、できれば「円満な退職」で、というのは当然ですが誰もが願うこと。だと思います。そのために、「退職理由を会社にどう伝えるか」はとっても大切です。

私自身、30歳のころに転職をした経験があります。そして、転職先では現在、管理職という立場になり、部下の退社や転職をずいぶんと見てきました。

この両面の経験から、「円満な退職をするために、上司や会社にどのように理由を伝えるべきか」について、お伝えをしようと思います。

個人的にですが、こういった話をする時に、最も大切だなと思うことは、「これから自分が進みたい道が自分の中ではっきり見えている」という意思をとにかく明確論理的に伝えること。この「はっきり」「明確に」「論理的に」がとっても大切です。

大抵の場合は、まずは上司に話すと思うのですが、こういった話というのは、相手の方もきっとびっくりすると思うので、とにかく丁寧に、しっかりと明確に伝える事が大事だと思います。

ちなみに、事前に心の準備をせず、上司に「辞めたいと思ってるんですけど…」と切り出すのは絶対におすすめしません。相手の方も面食らってしまって、落ち着いて対応ができなくなってしまいます。どのように伝え、上司にどう感じてもらうか、「戦略」や「シナリオ」といったら大げさですが、自分なりの「段取り」を考えてから伝えることが大切です。

そして、相手の気持ちになって考えてみれば、どの様な話し方をすべきか。というのも自然と分かってくるはずです。何か特別な事が必要な訳ではありません。当たり前の礼儀を土台にしていけば良いと個人的には思います。

私が円満に退職をする事ができた経験

まずは、私自身の退職の経験についてお話をしていきますね。

私が「円満な退職」をしたのは30歳のころ。新卒から7年間務めた会社でした。理由はとーってもシンプルで、希望していた転職先が見つかったから。そもそも転職したいなぁと思ったのは、その会社での自分が十分に活躍できていないという引け目がどうしてもあったからです。会社は待遇もよく、とくにノルマなどもない企画職で、なんとなく仕事をこなしていれば、毎月まとまったお給料をいただくこともできました。

ですが、企画がなかなか取引先に通らず、そのままくすぶっていても、会社に申し訳ないし、自分の中でも心の底から楽しめない思いがあり、企画ではなく制作職への転職を決めたのでした。※とにかく色々と迷っていた時期でもありました

その仕事内容の方が、自分も好きだし、得意だし、周りの人達に対しても貢献もできるんじゃないかなと思ったんです。※振り返ってみると、これは実際に当たっていました。

そして、当時の上司を呼び出し、転職の意思を伝えたました。まず、前述のような「貢献できずに申し訳ない」という気持ちを伝えると、「そんなことはない。仕事を変えたり、異動も視野に入れたりして、会社に留まってがんばろう」と引き留められました。

それはとってもありがたい言葉ではありましたが、退職についての話し合いが長引くのは避けたかったので、私はここで会話の内容を方向転換。

「もっと制作寄りの仕事がしたい。実は内定もいただいている」と話し、「それなら仕方がないね」と退社を認めていただきました。

正直な所、この時は話もうまくまとまって、これからやりたい事もできるという気持ちも一杯になり、すっごく晴れやかな気分になったのを覚えています。

こういう時はなんだかとてもエネルギーが湧いてくるもので、面倒な手続き事もサクサクと進める事ができました。残りの有休を使って、しっかりとリフレッシュする時間も取れたので感謝しながら退職をする事ができました。もちろん絶対に迷惑がかからない様に引き継ぎなどはしっかりと行う様にしました。

仮に自分が職場から離れた時に、仕事の手順などをまとめた資料などを作成しておくと、後々仕事を任された人もスムーズにタスクをこなす事ができます!

円満に退職をするための理由

円満に退職するためには、果たしてどのようなことを理由として挙げるのがふさわしいと言えるのでしょうか。私自身の転職経験と、何人かの部下から退職の意思を伝えられたときの経験から、お話ししてみます。

まず、絶対に避けた方がよいのは、今の会社や、人間関係への不満を露骨に理由にすることだと思います。

たとえば、

・給料があがらない

・福利厚生が充実していない

・仕事が単調でつまらない

・取引先が厳しすぎる

・先輩から学ぶことがない

・業務量が多くて残業が多い

といった理由です。

これらの大分ネガティブな理由を並べたとしても、だ~れも得しませんよね。聞いている側からすれば、きっと気分が悪くなるだけです。自分が聞かされる側の身になれば分かると思います。

実際に、これらが最大の理由だとしても、それを上司に伝えるならば、退職「前」にすべきです。

「このような悩みや不満があるから、こう改善してほしい。そうすればもっと意欲的に働きます」と伝えることには意味がありますが、退職を決めてから「ここが嫌だったから辞めます」と伝えたところで、何もプラスなことは絶対に起こりません。

ここでしっかりと伝えるべきことは、「これから自分がどうしたいのか!」という自分自身の意思です。

それこそが最も納得できる理由になります。

すでに次の仕事を見つけた場合は、「こういった仕事に興味が出てきたので、それを学べる環境を探したい」でも良いですし、まだ身の振り方を決めていない場合は、「勉強しながら今後のことをじっくり考えたい」と伝えましょう。


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「具体的には考えていないけれど、○○や○○の分野を考えている」などでもよいでしょう。

つまり、自分が「これから進む道」の方に、しっかりと気持ちが固まっている、という意思をちゃんと示すことです。たとえ、それが多少漠然としていても、自分の中でしっかりと揺らがない決意があることを伝えなければなりません。

そうすれば、上司は「本人の気持ちは固まっているようだから、慰留しても意味がない」「本人が前向きになれる選択が一番だ」と受け止めてくれるものです!

私の場合は、内緒で転職活動をしていたことが非常に心苦しかったのですが、全然嫌味などは言われませんでした。※ちょっぴり怖かったですけど、この辺りは正直に話せば分かってもらえるはずです。むしろ、それまでに残っていた「有給休暇」も消化をさせていただき、それに加えて退職金までいただくことができ感謝しています。

これは、しっかりと準備をして、相手の気持ちも考えた上で話を進めた事が良かったんでは?と思います。やっぱりこういう事は一つ一つ丁寧に進めていく事が大切だと感じました。少し気疲れもしましたが良い経験にもなりました。

円満に退職ができないとキャリアに影響する?

前の会社でも、今の会社でも、円満に退職できなかった人のケースを、いくつか見てきました。

ある人は、それまでは大変な仕事をマジメにこなしていたのに、不満や疲れが積もっていたのか、急に理由もなく「辞めます!」と宣言。その後、引き継ぎもせずに会社に来なくなってしまいました。

それまで2年ほど積み重ねた「コツコツ頑張る人」のイメージが、最後に「放り出して辞めた人」に。これはすっごくもったいないことでした。最後の印象というのは本当に大切で、ここで粗末な事をしてしまうと、「あの人はちゃんと仕事をしない人」というレッテルを貼られてしまいます。

他にも、「恋人と会う時間が足りないから」と正直すぎる理由を述べて辞めた人や、最後に「この会社の改善すべき点を物申す!」と一方的な上から目線メールを社員全員に送りつけて辞めた人も。

「飛ぶ鳥跡を濁さず」と言いますが、最後の印象というのは大切で、それまで積み上げたことが崩れるのは一瞬です。

世間は広いようで狭いもの。たとえば、同業他社に転職したとしましょう。円満退社ができなかった場合、「前の会社のあの人に相談したい」と思ったり、「前の会社で取引のあった会社を紹介してほしい」ということが不可能になってしまいます。こういう横のつながりというのは、結構多いものです。同業他社であればなおさらです。

社会に出てから知り合える人、何かあったら相談できる人というのは、簡単に何百人もできるものではありません。せっかくの人脈作りのチャンスを棒に振るのは得策ではないでしょう。人脈や人間関係というのは本当に大切です。

円満に退職をする事ができれば!

逆に、円満な退職であれば、「前の職場で知り合った人たち」を、「今の自分にとっての人脈」にすることができます。転職後も、前の会社の人ともたまに連絡を取り合ったり、近況報告をしたりと、ある程度の仲を保っておけば、それは一つの太い「人脈」になります。

仕事について相談したり、人材を紹介してもらったりすることも可能でしょう。歳をとっても横のつながりで職にありついたり、仕事が入ってきたりする人はやはり良い意味での人脈が豊富な印象があります。

私自身の経験からも、辞職した人から「相談があるのですが、お話しできますか」と連絡がもらえることは、光栄なことです。なんだかとっても嬉しい気持ちにもなります。そして、そのように声をかけてもらったとき、どれだけ親身になれるかは、やはり、辞めるときに「円満」であったかに左右されます。

上司も人間なので、気持ちよく送り出した部下や後輩であれば、何かできることはないか、と好意的に思えるものです。これで終わり!という気持ちで辞めるのではなくて、これからも関係を続けてもらうための辞め方を意識するのが良いと思います。あまり神経質になり過ぎる必要はないと思いますが、最低限の心がけでも全然結果は違ってくるんじゃないかと思いますよ。

その後の生き方に影響していく

これまでにお話した内容というのは、その後の生き方にも大きく影響していきます。自分の行動というのは、自分自身や、周りの人からの印象に大きな影響力があると感じます。特に歳を重ねるとそう思いますよ。

今回お伝えした内容は、上手な立ち回り方とも取られかねませんが、そうではありません。むしろ真逆です。いわゆる「しっかりとスジを通す」とか「周りの人との協調性を大切にする」といった考え方にも繋がると思います。

あまり上手く立ち回る事を考えて仕事をしたり、プライベートの生活を送るよりも、なるべく誠実に正直に生きていく事が大切と感じます。

まとめ

このように見ていくと、「円満な退職」とは、辞める際の伝え方だけでなく、「辞めた後の自分」のためでもあると言えます。

円満な退職を勝ち取ってやる!と、過剰に演技をしたり、嘘をついたり、媚びたりする必要はありません。会社に対しても、上司に対しても、と誠実であることは基本です。個人的な経験から言っても、やはりそういった姿勢というのは、雰囲気で周りに伝わっていくものだと思います。

本当のことを話すけれど、その中で「何を言うか」を選び、相手に「どう伝えるか」について、吟味することが大切なのです。基本的には、前向きな決断をした人を前にして、邪魔しようと思う人や会社はめったにないでしょう。

あくまで前向きに今後したいことを伝える、揺らがない意思を貫く、同時に、今の会社への感謝も伝える。

この姿勢さえあれば、「円満な退職」は無理して勝ち取るものではなく、自然に訪れるものになるはずです。


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